Fallen Islandの雑多な記録置き場。脳内妄想垂れ流しにつき、取扱注意。
Sun 05 , 22:05:09
2007/08
■◆■◆■◆■◆■◆■◆■【夏目先輩】■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
今年の新入生は三人。
しかも同じクラスの三人組だそうだ。
とても美人な子と、凄く背の高い子、それともう一人。
第一印象はそんなものだった。
もちろん、その最後の一人が最後の一人がキズナ。
特徴的と言えば、右頬から首筋に広がる■■の痕。
キズナはとても地味な子で、三人組以外の他の部員と会話をする機会も少ない。
夏の暑い日でも長袖のブラウスを着て、うっすらと汗をかきながら、一心不乱にモチーフのデッサンをしていた。
その姿にどこか異質な匂いを感じ、後ろ指を指す部員も少なくなかった。
正直、画力の上達の程は芳しくない。
センスで言えば三人組の中の美人の子が、タッチの素直さで言えば長身の子の方が光るものがある。
唯一、キズナの長所は熱心なことだ。
言い換えれば、熱狂的かもしれない。
愚直なほどに、ただひたすらまっすぐ。
斬りつけるように鉛筆を紙面に振り下ろしていく。
何百回
何千回
イーゼルに向かうその表情には、僕でさえ戦慄を覚えた事もある。
まるでナイフか何かで獲物を切り裂く殺人鬼の様に見えたのだ。
もっと肩の力を抜ける様に、たくさんのアドバイスをしたこともある。
ガッタメラータ将軍、アポロン、ブルータス、アリアス、影の温度と質感、柔らかい線と固い線、男の肉と女の肉。
ほとんどは獅子先生の先任で、産休に入った一子先生の受け売りだったけれど。
この手の指導は、獅子先生が裸婦デッサンを期待して、一子先生の後任で美術部の顧問になったその日から絶える事なく僕の仕事だった。
中学はおろか、学校で裸婦デッサンなんてあるわけはないのに。
もちろん、キズナは冗談を交えて会話をすれば、年頃の女子の様に、はにかみながら返してくる。
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